能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(雑録)「偉人たる愛犬:我らが愛しのクララ」

 思い出話をする。

 犬派?猫派?という質問がある。下らない質問で、私はどちらも好きだけれど、子供の頃から我が家では犬を飼ってきた。もはや実家に帰る歓びは両親に会うことよりもちぎれんばかりにしっぽを振って喜ぶ犬にあるのではないか。それぐらい、我が家と犬は切っても切れない関係にあった。

 私は小学校2年のとき、祖父母との同居のために引っ越しをし、そこから犬との付き合いが始まった。今の愛犬は私にとって、3代目なのである。

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三代目

 

 私にとっての初代は、二匹いて、一匹をクララと言った。ヨークシャーテリア。もう一匹はポポといい、犬種は覚えていない。小学校の頃の私にとって、大柄なポポはやや近寄りがたい存在だった。祖父母と母にとっては、三代目だったようだ。

 残念ながらクララやポポの写真は手元にない。私が中学校へいくぐらいで亡くなった。ポポはオスで、クララはメスだった。ヨークシャーテリアにクララというのは結構お似合いな気もするが、ポポといういかにも素朴な犬の名前に対して、いかにも由緒がありそうだった。

 名付けたのは母だそうだが、その由来は「クララ・シューマン」だった。クララ・シューマンというのは、ドイツのピアニストで、ロベルト・シューマンの妻として著名である。

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クララ・シューマンウィキメディア・コモンズより)

 

 クララ・シューマン、当時から才女として知られ、夫ロベルトの亡き後?はやはり作曲家のヨハネス・ブラームスと「いい仲」であったとされる。女性の作曲家や演奏家があまり尊重されない、知られていない近代という時代に名を残した稀有な存在である。作曲家の妻としては、グスタフ・マーラーの妻であった、アルマ・マーラーと並んで著名な存在と言える。今ではシューマンの名前は知られているものの、一時期はクララのほうが夫を遥かに凌ぐ知名度を持ったらしい。

 


シューマン, クララ: 3つの前奏曲とフーガ,Op.16 3. Pf.佐藤圭奈:Satoh,Keina

 

 ときおり思うのが、偉人は往々にして優れた家族や友人に恵まれている。芸術家、音楽家、作曲家のような毀誉褒貶の激しい人物が困難な時代を一人で生き抜くのは困難であり、才能を支援してくれる恵まれた家人や友人に出会うことも成功のひとつの要件であるかもしれない。ロベルトは晩年ひどく精神を病み、寄り添うクララにも少なからず苦労があったろう。

 思うのは、母がなぜクララという名前を愛犬につけたのか。印象では、母がよく弾く作曲家はショパンドビュッシーだった。とくにシャーマンを好んだ印象はない。母に聞けば良いけれど、いまさら20年も前の愛犬の名前の由来を聞くのも面映い。とすると、これは謎のまま放置されるのだろう。

 ベートーベン(映画)にでてくるセントバーナード(名前はベートーベン)、バック・トゥ・ザ・フューチャーという映画シリーズに出てくるドクの愛犬は、アインシュタインコペルニクス涼宮ハルヒの憤慨に出てくる阪中の愛犬ルソー(誰が覚えているんだろう)。

 ペットに偉人の名前をつけることはよくあるのだろうか。皆さんの愛犬や愛猫は何というだろう。その由来と物語をたずねてみたい。