能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(台湾コロナ事情)「台湾コロナワクチン事情」

 台湾での新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、台湾国内ではここに来てワクチンへの受容が急激に高まっています*1。これをうけ、現在の台湾における新型コロナウイルスワクチンに関する状況を整理しておきたいと思います。

 

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This image was originally posted to Flickr by Chairman of the Joint Chiefs of Staff at https://flickr.com/photos/42310076@N04/50745583447. It was reviewed on 22 December 2020 by FlickreviewR 2 and was confirmed to be licensed under the terms of the cc-by-2.0.

1. 台湾はワクチン確保に遅れ。陳時中は中国の関与を示唆(2021年3月まで)

 台湾はこれまで国際的なワクチン供給機構、COVAXを通じて新型コロナウイルスのワクチン確保に取り組んできました。しかし、ファイザーを始めとする欧米の製薬会社との協定締結がはかばかしくなく、ワクチン確保は欧米やアジア諸国と比較して遅れが見られました。中国からワクチン提供の申し出がありましたが、むしろこうした中国の姿勢を批判していました。衛生部中央流行疫情指揮中心の陳時中は、こうした台湾がワクチン確保に立ち遅れている要因として、中国の介入を示唆しています*2

 

2. 台湾ワクチンはAZ製がメイン、副作用・副反応への懸念強く(2021年3月~4月)

 ようやく台湾が確保したワクチンは、イギリスの製薬会社、アストラゼネカ製で、デンマークノルウェーでは、副作用の懸念が大きいことから、接種が見送られているものでした*3。台湾は、それでもAZ製ワクチンの接種を勧めていく、推進する立場をとりつつ*4、他社製のワクチンや国産ワクチンの開発を急ぐこととしました。

 2021年3月にはCOVAXを介さず、AZから入手したワクチンが台湾へ送られ、医師や政府関係者が摂取を行いました*5。4月4日、AZやジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンがCOVAX調達ワクチンの第一陣として台湾に到着*6、医師や看護師など医療従事者への公費接種を始めていましたが、副作用への懸念から接種率はあまり向上していませんでした。

 

3. 高齢者向け公費接種・自費負担による接種始まる(2021年4~5月)

 AZワクチンへの忌避感が広がる中で、すでに購入したワクチンを有効活用する意味もあり、自費接種を進めていくことになりました。4月21日、医療従事者や高齢者でもない人々への自費接種の予約がウェブを通じて始まり、またたくまに予約でいっぱいになりました*7。さらに、AZ以外のワクチンとしては、アメリカ・モデルナ製のワクチン購入で合意にいたり、5月に台湾へ発送されることになりました*8(のちに6月に延期?*9)。

 

4. 流行拡大でワクチン受容が急拡大。国産ワクチンは7月(2021年5月第3週)

 今週の急激なコロナ感染状況の悪化を受け、5月14日のワクチン接種者はこれまでで最大を記録、5月末分までの在庫を打ち終わることがあきらかになったため、5月15日にはしばらく接種予約の受付を中止すると発表しました。*10

 これにさきだつ5月13日、蔡英文総統は7月から国産ワクチンの供給が始まることを発表しました*11。うち、高端はアメリカNIHの技術を取り入れ、現在第二次臨床試験に進んでいます。年内には最大1000万打の供給が可能とのこと。聯亞もこれに続いています*12

 

 台湾がこれほどまでワクチン供給に手間取っているのは意外に思えますが、国内の感染状況からすれば、まだ間に合うとの判断があったのかもしれませんし、中国などの介入っがあったのかもしれません。いずれにせよ、台湾は正念場に入り、一刻も早くワクチンの確保と接種を推進する必要が出てきたように思います。