能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

台湾のおなはし(第0回)

以前、書くと言ったきりそのままになっていた話を、何回かに分けて書ける範囲で台湾のお話を書いていきたいと思います。今回はその導入(導入したまま終わりませんように…)。

 

○1:日本と台湾の関係、現況

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 台湾は東シナ海上、中国福建省の洋上にある島です(外務省HPより)。面積は36,191平方km、人口は2,337万人*1の小さな「島国」です。外務省のホームページ*2では、アジアに於ける「地域」として香港やマカオと同等に扱われています。その主たる要因は、日本と台湾の間には正式な国交が存在しないためです。台湾は自らを「中華民國」(Republic of China, ROC)と称し、現在は台湾と澎湖諸島など周辺島嶼を領土とする独立国であると主張していますが、日本をはじめとする主要国はその存在を公式には認めていません。台湾と国交があるのは、中南米や太平洋州の小国家が多く、事実上国際社会からは黙殺されています。その主たる要因となっているのは、中華人民共和国(People's Republic of China,以下中国)との関係です。

 

 たとえば、日本が1972年に中国と発表した、「日中共同声明」には

 

(第2項) 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。(第3項) 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する

 

と示されており、中華人民共和国が「中国」であり、台湾は中華人民共和国の一部であるとの見解を示しています。

 一方で、台湾は日本にとって第5位の貿易相手国であり、日本から台湾へ渡航する旅行者は年150万人弱を数えていますが、これは中国政府を介した関係が構築されている訳ではなく、あくまで「非公式に」日本と台湾の関係が直接に構築されていますし、現状では中国政府もこれを認めています。

 1998年に日中間で発表した「日中共同宣言」には「日本は、引き続き台湾と民間及び地域的な往来を維持する」と明記されています。近年は日台間でビザなしでの旅行が可能となっているため、利用する機会もほとんどありませんが、「交流協会」「亜東関係協会」という事実上の大使館組織を通じてこれらの交流の基礎を構築しています。こうした民間レベルでの非公式な交流を世界の多くの国でも継続しており、そのあたりからも台湾の微妙な立場が垣間見えます*3

 

 すなわち、日本から見れば、事実上台湾という国家は存在しているにもかかわらず、日本国政府は台湾を曖昧にしか認識せず、民間での交流、とりわけ経済的な交流を継続していることになります。

 では、こうした状態はいつから始まったのでしょうか。社会の授業では、日本と中国は1972年に日中共同声明を発表し、1975年に日中平和友好条約を結んで国交を回復したと習ったように思いますが、では、1945年から72年までは日本と中国の関係はなかったのでしょうか?そこに台湾(中華民国)が関係してくるのですが、またこの辺りは次回に。

 

*1:外務省中国・モンゴル第一課・第二課(2014)「最近の日台関係と台湾情勢」より

*2:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/asia.html

*3:たとえば、アメリカ政府は’The United States and Taiwan enjoy a robust unofficial relationship. The 1979 U.S.-P.R.C. Joint Communique switched diplomatic recognition from Taipei to Beijing'と述べています