能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(台湾社会)「台湾におけるオンラインフードデリバリーサービス」

 日本では近年、Uber  eatsをはじめとするフードデリバリーサービスが普及し始め、それと同時に多くの問題が噴出して話題を集めています*1

 ここで主な問題になっているのは、フードデリバリーサービスという、いわばシェアリングエコノミーのサービスレベルの低さと、そのレベルの低さが脱法的と言ってもいい使用者-被使用者の関係、フードデリバリーサービスがデリバリー中の事故や問題に対して関与しようとしない、無視を決め込むなど構造的な問題でしょう。

 台湾でも近年Uber Eatsをはじめとするフードデリバリーサービスが流行し始めましたが、それと同時に多くの問題が出ているとの声が出始めています。

 

 

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①:台湾におけるフードデリバリーサービス

 そもそも家庭料理に対する信仰が強い日本と較べて、台湾では外食はごくごく当たり前のことです。一説によれば90%もの人がふだん外食で生活しています。また台湾の飲食店は小規模な店舗も多く、そもそも「外帯」(持帰)を利用するお客が多いという事情もあります。台湾全体での外食における年間消費額は約4,800億円(日本円で1兆3千億円程度)です。こうした土壌の中で、フードデリバリーサービス(外送、以下FDS)は急速な発達を見せています。現在では、このうち約5%FDSで消費されていると言われ、この1年で3倍の成長が見込まれています。。
 現在の台湾でメジャーなFDSは、国内資本では無快送、 foodomo。国外資本ではUber Eats、foodpanda 、deliveroo、Lalamoveとなっています。こうしたサービスは都市に集中しており、各サービスは着々と提携店を増やしています。一方で、マクドナルドやケンタッキーなど既存のファストフードチェーンはこれだけでなく独自のデリバリーサービスの提供を拡大しています。
 このうち、foodpandaはドイツ系資本で、2012年に台湾市場でサービスを開始しました。2018年までにその利用者は35倍に拡大、昨年と比較しても1.5倍に成長しています。Uber Eatsは2016年に台湾でサービスを開始し、Uberとの連携などでそのシェアを拡大しつつあります*2
 一方で、もはや台湾のFDSは飽和状態であり、レッドオーシャンであるとの意見もよく見られます*3

 老若男女ともにスマホを使いこなし、外食文化が成熟している台湾は、FDSにとって参入しやすく、また原付の普及率が高い台湾は働く上でも参入障壁が低いのかもしれません。

 

②:台湾FDSの問題点

 この点については、台湾の問題というよりそもそもFDSが内包する問題と言えるでしょう。簡単に言えば、i:FDSの雇用形態とii:労働環境・状況の問題です。

 

i:FDSの雇用形態

 日本でもそうですが、FDSの「外送員」はFDS企業の社員ではありません。雇用という形態を取らず、委託という形態を採ることが普通です。それにより空き時間や暇な時間を利用してお金を稼ぐことが出来るわけで、こうした形態が即「悪」とは言い難い現状です。

 台湾の労働局も、こうした雇用形態が、仕事の不足を補ったり、伝統的な労働形態を越えた新しい労働な形として理解を示してはいます*4

 こうしたFDSは外送員の募集に際して「月給10万元」も可能である旨宣伝していましたが、実際にはさほど高くはなく、精々3万元程度であろうと指摘されています。これは決して高い数字ではありません*5

 すなわち、不安定な雇用形態である上に、その仕事量や仕事時間は流動的で、個人差が激しく、期待したほどの収入が得られていないわけです。

ii:FDSの労働環境

 問題はむしろこの点で、昨今台湾でFDSが話題となっているのは、FDSの過酷な労働環境です。外送ということは、店舗で食品を受け取り消費者の指定地点へ配送するわけですが、台湾では大半の外送員がバイクで配送を行っています。

 台湾のバイクはお世辞にも安全な乗り物とは言えず、ここ半月でFDS外送員は交通事故によって一人が死亡、23人が怪我、30件の事故が発生しています*6。1日約2件の事故が発生していることになります。

 FDS企業の増加、外送員の増加に伴い、競争が激しくなり、また決まった日数でたくさんの注文を受けられればボーナスを提供する企業もあり、競争に拍車をかけ、事故を誘発しているとも批判されています*7

 

③:問題解決には「法整備」が不可欠

 こうした問題を解決するためには、FDSに関する法整備、さらにはシェアリングエコノミーに関する法整備が必要との意見が見られます*8FDSはたしかに「雇用」という形態で外送員を使用してはいないが、指揮監督という観点で見れば、たしかに外送員を事実上「雇用」しているわけで、彼らの監督責任は問われなければならないという見方です。

 短期的には、外送員には保険加入を義務付け、最低限彼らの事故に対する備えが必要であると見られています*9。労働保険、商業保険の整備や、雇用・請負関係の明白化などは、いわば規制強化の動きと言えますが、交通事故の増加や食品衛生上の問題も鑑みれば、利用者負担を前提のその管理強化を進めることは不可欠であろうと思われます*10

 今後はその望ましいあり方を巡って台湾社会で議論が進むと思われます。

 

 

*1:ウーバーイーツの働き方が変わる? 「傷害補償制度」導入と「労働組合」結成…双方に見解を聞いた - FNN.jpプライムオンライン

ウーバーイーツに苦情のオンパレード…配達員が料理投げ捨て→本部は「警察に連絡しろ」

「Uber Eatsつけ麺事件」があぶりだした問題点 | 災害・事件・裁判 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

*2:外送平台夯/搶237億元商機 業者「肉搏戰」拚市佔率 | 外送帝國現象 | NOWnews 今日新聞

外送市場熱,餐飲業者攜手平台商搶進-MoneyDJ 理財網-觀點新聞-商周財富網

*3:美食外送平台 燒錢搶市占 沒一家賺錢 - 自由財經

外送早已是紅海 這三種餐廳加入外送平台才有賺開講無疆界 - 讀者投書 新頭殼 Newtalk

*4:美食外送員何去何從? 產官達成5大共識 - 自由財經

*5:外送員薪水到底高不高? 行家曝「殘酷真相」:誤會大了 | 新奇 | NOWnews 今日新聞

*6:外送員車禍事故驚人 北市14天達31件釀1死、21傷-風傳媒

*7:外送員車禍身亡未通報 北市勞動局重罰Uber Eats30萬 - 生活 - 自由時報電子報

*8:外送員盼權益受保障 鄭宏輝提三大主張 | 地方 | 中央社 CNA

*9:外送員強制加保意外險? 勞動部24日與外送業者座談 | 財經焦點 | 產經 | 聯合新聞網

*10:看問題/外送員3天2死之後…勞檢火速?落實職安慢半拍 | 食物外送員之死 | 要聞 | 聯合新聞網