能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

大連ところどころ

「表へ出るとアカシヤの葉が朗かな夜の空気の中にしんと落ちついて、人道を行く靴の音が向うから響いて来る。暗い所から白服を着けた西洋人が馬車で現れた。ホテルへ帰って行くのだろう。馬の蹄は玄関の前で留まったらしい。是公の家の屋根から突出した細長い塔が、瑠璃色の大空の一部分を黒く染抜いて、大連の初秋が、内地では見る事のできない深い色の奥に、数えるほどの星を輝つかせていた」夏目漱石『満韓ところどころ』

 

・①:漱石も歩いた大連

 夏目漱石が旧友の中村是公に誘われて大連から満州を経て朝鮮半島を旅したのは1909年のこと。神戸から大阪商船の「鉄嶺丸」に乗って大連へ到着します。

 ロシアが遼東半島清朝から租借したのは三国干渉後の1898年、旅順に軍港、大連に桟橋を作るなど開発がはじまりました。当時、大連は「遠い」を意味するダルニーと呼ばれていたそうです。そしてこのロシアが開発をはじめた大連を、日露戦争によって日本が「関東州」の一部として租借することになりました。これが1905年。満鉄が出来たのは1906年ですから、漱石が大連へ行ったのはまだ日本によるまちづくりの途中も途中の時代でした。文中では市電が建設中との描写もあります*1

 つまり、現在の大連はロシア・日本・中国という3つの国によって構築された街といえ、大連には三つの時代に建築された建物が多く残されていることになります。
 この大連の町割りは、フランスのパリをモチーフにしたものと言われています。町の中央に広場を作り、そこから放射状に道路をしき、またさらに広場を作って街を連ねる構造になっています。いかに地図を示しました。

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 少々見づらいですが、青が当時市電の路線、赤丸が代表的な場所です。大連駅の右下あたりに大広場、現在の中山広場があります。そのほか、いくつかの広場が作られ、そこから放射状に道路が広がっているのがわかります。右上にある櫛のような場所は波止場で、漱石もここに着いたのでしょう。

 

・②:満鉄旧跡陳列館

 さて、昨日の夜半にようやくホテルに到着した我々は朝寝を決め込みつつ、早速大連をうろうろします。結局この日は1日で3万歩も歩きました。

 朝食は小籠包とワンタン。ワンタンがほぼ餃子サイズでしかもかなり量がありましたが、ペロリ。

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 さてお見あての陳列館です。ようは博物館ですが、旧満州鉄道本社(地図に示しています)の内部が見学できます。見学料は50元。なかなか強気の設定ですが、日本語のガイドが付きます(要電話連絡)。日本語ガイドさんはかなり日本人に「優しく」説明してくれます。建物はかなり大きいのですが、ロシア人が建てたもともとの建物を日本人が増築した形になっています。乗務員の派出所のように使われても居るようです。というわけで、室内はロシア風だったり。 

 

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 下は満鉄総裁の執務室です。後藤新平中村是公をはじめとして、16人の総裁の写真が展示してあります。ここに座って写真を撮るには「200元(3400円ぐらい)の本を買って下さい」、とガイドに言われます。なかなかなかなかの強気です。なお、「お土産」ものの販売では、貴重な旧満鉄の食器や時計などを売っています(売っていいのだろうか…)。同行者が結構な額を使ったので、無事に?写真を撮ることが出来ました。

 

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 外観はやはり結構がたが来ています。100年以上前の建物ですから…。

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・③:ロシア風情街

  駅の脇にある「勝利橋」(日本橋)を越え、駅の北へ向かうと「ロシア風情街」(俄罗斯风情街)があります。勝利橋の真正面にあるのは、東清鉄道の本社だった洋館。どうも近年復元されたもののようです。そこから、やはり東清鉄道の旧本社だった洋館(二枚目)までがだいたいロシア風情街です。

 帝政ロシア時代の建物が多いらしいのですが、外観はどうもリノベションされているか、デカデカと「ロシア土産」(といってもマトリョーシカとチョコレートぐらい。あとは「英語で」ソビエトと書かれたものなど)などと書いてあり、どうもしっくりはきません。裏側の路地のほうが風情があったそうですが、これは数年前に新しいビルに置き換わったそう。地方にまで開発の波が進みつつあるのです。

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 さて、こういう感じでうろうろしていたらすっかり昼を過ぎました。どこかで昼を食べることにしましょう。そこからの模様はまた次回。

 先にざっと行程を見たいという方は同行したあくあちゃんのブログを御覧ください。路面電車の写真がいっぱいあるよ!

 

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