(近代建築探訪)「員林市場」
員林は台湾中部、彰化の南に位置する市です。2015年に市に移行しましたが、それまでは鎮で、人口12万を誇る大きな「鎮」でした。いわゆる彰化平原に位置する農業が盛んな街です。これと言った観光名所は……特にないので、おそらく日本人の皆さんが訪れる機会はまずなさそうです。私はたまたま先輩がこの員林の出身なので、誘われて街を一周してみました。その際に見つけた歴史建築、員林市場をご紹介します。
員林市場の歴史は1902年、日本統治時代の初期に遡ります。衛生設備が整わない地方において、清潔な食料の売買を目的として設置されました。現在の建築は、おそらく1936年に作られたもののようです。現在では、市場の周囲にも建物が立て込んでしまって元来の建築がほとんど見えないのですが、ちょっと内部に入っていくとこのような感じで残っています。
内部は現在でも現役の市場として使われていますが、屋根の小屋組みは木造。はたしてこれは80年前のままなのでしょうか……?
ごちゃごちゃとして見にくいですが、内部は鉄骨で耐震化がなされており、現在でも現役で使用されている感が強いです。台北の西門町にもレンガ造りの市場が残されていますが、これもまた田舎に埋もれた名建築でしょう。
周りに建物が立て込んだおかげで、かえって風雪から守られているような気もします。内部の建築は確かに1930年代ぐらいの風格をたたえています。
建物自体はロの字型で、その周囲にも建物が立て込んでいます。グーグルマップの航空写真からだと特徴的な形が見受けられます。
写真をご覧いただければわかると思いますが、丸い窓やアールを描いた柱などがなんとなくアール・デコっぽい様式を湛えています。80年前の台湾の片田舎にこうした建築を残したというのはいかなる気概だったでしょうか。
さて、員林という片田舎まで実際にお越しになる人はあまり多くはないと思いますが、ご参考までに。
<地点>
・510彰化縣員林市中正路346號
台鉄員林駅から徒歩5分