能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

 (台湾ニュース)「IQ180と話題の台湾のIT担当大臣!オードリータンはトランスジェンダー!? 経歴は!? 調べてみました!」

①:78歳のIT担当大臣、ネットで議論に

 内閣改造(第4次安倍晋三改造内閣)でございます。政権にとって、改造は諸刃の刃となります。これまで曲がりなりにも務められてきた人から、場合によってはどこの馬の骨ともわからん人間に、いろいろな兼ね合いから大臣の椅子を任せなければならないことがあります。こうした馬の骨は、往々にして政権にとって致命傷となることがありますし、派閥色の濃い人事は、当然に国民は敏感に反応しますし、大きな批判を呼ぶことがあります。
 さて、大変申し訳無いのですが今回の内閣改造における「馬の骨」枠、おそらく78歳の科学技術・IT担当大臣の竹本直一氏で決定でしょう*1
 78歳とご高齢ながらIT担当大臣として起用された理由は「スマートフォンを使ってSNSを操作できるから」という日刊スポーツの真偽不明な報道もあります。さてこの話が出てきてから、竹本氏に関する情報が色々飛び出してきましたが、どうもIT担当大臣に関わらずはんこ議連の会長であるとか、HPにつながらないとか、公式You Tubeの高く評価した動画が不穏であるとか話題になっています。
 そんななかで、この馬の骨と較べて!と言っては失礼なのですが、話題になった方がいます。台湾の政務委員(無任所大臣)である、唐鳳(オードリー・タン)氏です。今日はこの唐氏について調べてみたいと思います。

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唐鳳(オードリー・タン氏)、ウィキメディア・コモンズより

 

 

②:IQ180の天才!?

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他人のコンピューターをハッキング(クラッキング)して悪いことをしようとしているハッカー(クラッカー)のイラストです。(いらすとや)

 2016年、鳳氏は台湾最年少の35歳で政務委員に選出されました。行政院政務委員は、部長(大臣)とは異なりますが、無任所大臣といった位置づけの職種です。彼女はその選出時に大きな話題を呼びました。なにしろその経歴が華麗なものだったためです。
 まず、8歳でPCを独習、中学中退後16歳で企業を立ち上げ、BenQAppleなどの著名企業の顧問を務めただけでなく(Siriの開発に関わったとも言われています)、積極的に社会運動にも貢献し、「台灣零時政府g0v社群」のコアメンバーとして、ハッカソンの開催など政府の情報公開を推進し、市民の社会運動への参加を促すプラットフォームの開発などに専心してきました。2014~2015年には行政院が手掛ける仮想世界の法整備プロジェクトにおいても顧問を務め、またオンライン法規討論サイト「vTaiwan」の設置にも力を注ぎました*2
 つまり彼女は、ハッカーとしてその天才的な能力を発揮しただけでなく、社会運動家としても台湾、世界に大きな影響を及ぼしているのです。一説によれば、そのIQはなんと180だそうです*3


③:「ひまわり学生運動」の黒子

 また彼女は、台湾の重要な学生運動である、「太陽花学生運動」(ひまわり学生運動)にも参加し、メディアにおける情報戦略において重要な役割を果たしました。

 いまだに記憶に新しいですが、立法院の議場を占領した若者たちは、インターネットを通じて様々な情報を世界に発信していました。彼らがこうした情報発信に専心することができたのも、彼女の有形無形の支援であったとされています*4。ここまで来ると強キャラ過ぎて「マジかよ」としか言えませんよね!?

④:「トランスジェンダー」初の大臣

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虹色の旗のイラスト(いらすとや)

 彼女を語る上で、必ず避けて通ることができないのは、彼女がトランスジェンダーであるということです。出生時、彼女は男として生まれ、成人後の2005年に性別適合手術を受けています。選出当時、彼女は世界で初めてのトランスジェンダーの閣僚でした*5

 

⑤:国際社会でも台湾の存在をアピール!

 2018年には、国連の会議で、台湾の閣僚としてタブレット端末を使ったビデオ演説を行っています。2019年にも、彼女はニューヨークへ赴き、「北美洲台灣婦女會」に参加、そこでの講演では、台湾が数十年来自由民主制度を維持するために専心してきたこと、中国の圧力の中でも現状を保ち、民主的な政治体制を育んできたことを紹介しています。一般的に考えられるような、IQ180のスーパーハカーとのイメージと異なり、彼女は自身の属する台湾、社会の改善、改革と世界へのアピールを同時にこなすことができる稀有な人材と言えます*6

 

⑥:入閣後の活躍は!?

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プログラムのコードが表示されたコンピューターのイラスト(いらすとや)

 入閣後、彼女はインターネットの活用を主軸とした政府の透明化を推進し、また市民の積極的な参加と議論空間の構築、対話の実現に取り組んできました。またそれだけでなく、公務員の業務量の削減をすすめるべくデジタルプラットフォームの有効活用を主導しています*7
 現在では、台湾でも問題になっているフェイクニュースへの対応、若者の社会参加の推進などを担当しており、FBやLINEなどのSNS上で構成されているネットコミュニティの有効な利用がフェイクニュースの抑止に有用であるとの立場を表明しています*8
 いかがでしたか!?予想以上にすごい経歴かつ実務的な意義、社会的な意義での活躍も凄まじく、ハンコ・78歳で喜んでいる某国との落差にゲロが出るような思いでしたね!唐鳳氏の存在は、思い切った人材の活用と宣伝による、ある意味では国際社会への台湾のアピール戦略ではあると思います。しかしながら彼女は、単に技術者としてだけではなく、社会運動家として、政府と社会、市民をつなぐプラットフォームの提供に注力しています。それこそが、彼女を大臣として登用、活用する現在の民進党蔡英文政権の柔軟さ、キモともいえる部分でしょう。今後の彼女の活躍にも期待が大きいですね!

 最後までお読み頂きありがとうございました!

 

<2019年12月12日追記>

ヤフーニュースで、オードリータン氏のインタビュー記事が掲載されています。

興味深い記事ですので、ぜひご一読ください。有能な民間人を政府に登用することは、簡単ではありますが、有能な人間が存分に活躍できる環境を提供できるかどうかは、けして簡単なことではないと思います。本人だけでなく、周囲を変えていく力を持っている、周囲がそれを受け止められることが、台湾の強みであることを実感できるインタビューでした。

news.yahoo.co.jp