能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(台湾ニュース)「郭台銘氏、国民党離党。総統選挙へ→やっぱりやめました」(台湾政治外交)

 先日の記事でもたびたび言及していましたが、来年の台湾総統選挙を睨み、国民党「名誉党員」で国民党の総統予備選挙立候補者、鴻海グループ元会長の郭台銘氏が本日国民党の離党を発表しました*1

 郭氏はこれまで、新たに台湾民衆党を立ち上げた台北市長の柯文哲氏との協力関係が知られており、台湾民衆党から総統選挙への立候補も取り沙汰されています。しかし、郭氏はいまだに明確に宣言はしておらず、17日には表明すると発表しています*2。→台湾時間16日午後11時に突然不出馬を宣言しました*3。ますますわけわからんことになってきましたね…。続報を待ちます。

①:郭台銘とは

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郭台銘氏(ウィキメディア・コモンズより)

  郭台銘氏は、1950年台北県板橋生まれの68歳。父は山西省出身の外省人で、一大で台湾と東アジアに股をかける大企業集団、鴻海グループを作り上げた立志伝中の人です。日本では、シャープの買収時に特に名前が知られるようになりました。

 基本的に、郭氏は国民党党員として1970年以降党籍をおいていましたが、党費の未納により正式な党員とは認められておらず、2019年4月に改めて国民党より名誉党員の称号を授与され、国民党の総統候補予備選挙に立候補しました。

 結果的には、韓國瑜高雄市長が国民党の総統候補として選出されましたが(44対27)、郭台銘氏はこれに不満を覚え、柯文哲台北市長が立ち上げた新党台湾民衆党への参加が取り沙汰されるようになりました。

 ここ数ヶ月の韓國瑜市長への不満が国民党内で高まる中で、その「代替」候補にも取り沙汰されましたが、結局の所離党することとなりました。郭氏は、離党と総統選挙への参戦は無関係としています(誰が信じるねん)。

 

②:国民党は本日朝刊で郭台銘氏を牽制

 本日の『聯合報』朝刊には、連戦元国民党党首、馬英九元総統、呉敦義党首など31名の国民党党首が連名で韓國瑜と郭台銘が国民党として一致協力して中華民国を救うよう求める広告を掲載していましたが*4、見事に面目を潰される結果となりました。

 郭氏のスポークスマンは、郭氏の離党について以下のように発表しました。

 

 「這群守舊、迂腐的中常委,把自己利益放在政黨利益之前,又把政黨利益放在在國家利益之前,與郭台銘當初返回國民黨的初衷完全背道而馳,郭先生也不會眷戀這個政黨」(この時代遅れで腐敗した中央常務委員会は、党利より自分の利益を先んじ、また国益より党利を先んじた。(彼らは)郭台銘が国民党に復党した初心を完全に裏切った。郭氏はもはやこの党に愛着を持つことが出来なくなった)*5

 

 国民党は郭台銘氏に対して、党の規定に則り処罰を加えるとしています*6。韓國瑜氏は、この度の郭台銘氏の離党を遺憾に思うとの談話を発表しています*7

 

③:最新の世論調査では蔡英文総統がリード

news.ltn.com.tw

 

 9月5日に発表された世論調査によると、蔡英文現総統は、韓國瑜氏、郭台銘氏、柯文哲氏に対してリードしており、現状では、蔡英文/韓國瑜、蔡英文/郭台銘、蔡英文/韓國瑜/郭台銘(+柯文哲)、いずれの場合でもリードを保っています。

 特に、国民党支持層にとっては、郭台銘の離党、そして総統選挙への立候補ともなれば、支持層を二分することにもなりかねず、2000年総統選挙における、連戦(国民党候補)、宋楚瑜(元国民党党員、親民党候補)、陳水扁民進党候補)の三つ巴の選挙戦と、そこから宋楚瑜と連戦の激しい競り合い、結果的には僅差で陳水扁が勝利をおさめるというあのトラウマを掘り起こすことにもなりかねない状況です*8。一方で、蔡英文陣営としても、同時に二方面の有力者との中傷合戦のなかで勝ち上がり、実績をアピールする必要もあり、今後は一切の失点が許されない厳しい選挙戦を戦う必要が出てくるでしょう。

 現状は蔡英文有利の雰囲気ではありますが、今後も余談が許されない激しい展開が予想されます。

 

(追記)松田康博教授の見解

 

www.facebook.com

 

 先日来話題にした松田教授がこれについて見解を発表しています(中国語!)。この件に付いては、ほぼ上で述べたことと同じだったのですが、興味を引いたのが、松田教授はこれまでの中台の貿易関係は米中の貿易関係に依存してたこと、現在の米中貿易戦争というような状況においては、こうした中台貿易関係も無効化しつつあると指摘しています。

 これが台湾の社会に通底すれば、中台貿易関係の促進を主張する国民党にとっては不利な戦いになるでしょう。一方で、中国から台湾を訪れる観光客の数は激減しており、ホテル業界ではこれに対する懸念が生じており、政府はなんらかの対応が迫られるでしょう。