能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(台湾政治外交)「蔡英文総統国慶日演説全文」(日本語暫定翻訳)

 中華民国国慶日おめでとうございます。

 本日は蔡英文総統の国慶演説の日本語訳(暫定版)を掲載します(誤訳ご指摘いただけると助かります)。

 演説では、未来を見据え、台湾の価値を「自由・民主」を守ることに置き、「一国二制度」への反対を表明しています。

 原文はこちらから。

www.president.gov.tw

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蔡英文総統(タピオカの姿)

  大会主催の蘇嘉全院長、この場にお越しくださった来賓、テレビ・インターネットの前の同胞のみなさん、おはようございます。
 今日は、中華民国108年の国慶日です。世界各地からお越しくださり、そして我々とこの紀念すべき日をともに過ごして下さりありがとうございます。
 本日この日は、全国2300万国民の一日であります。私はまた馬前総統、呂前副総統、呉前総統、そして各政党の代表の皆様に、ともに国慶を祝えることを感謝したいと思います。
 昨年の、やはり国慶日。私は皆様に台湾が変革の只中に置かれていることを申し上げました。世界的な貿易情勢、国際政治情勢の変化は、これからの世界を課題で満たしています。我々はかならず、「穏やかに、応変に、前向きに」実力を蓄え、壮大な台湾を実現せねばなりません。
 この一年に目を転じてみれば、世界は依然として急激に変化し、さらにその変化は激しさを増しています。米中の貿易戦争は引き続き続いており、我々とまた近い香港も、「一国二制度」の失敗により、その秩序を失いつつあります。
 それでも中国は依然として、「一国二制度による台湾統治」という手法で我々を脅かし、また各種の文化的、あるいは武力的威嚇でもってこの地域の平和と安定を脅かさんとしています。
 同胞の皆さん、自由、民主が挑戦を受け、中華民国の生存と発展はまた脅かされようとしています。我々は、かならず立ち上がり、これを守らねばなりません。「一国二制度」を拒絶する。これは2300万の台湾人民が、党派を超え、立場を超えて有する最大の社会的合意(コンセンサス)です。
 台湾に中華民国が確立されすでに70年、「一国二制度」をひとたび受け入れれば、中華民国はその生存空間をただちに失います。総統として立ち上がり、国家の主権を守ること、これは挑発ではなく、私の最も基本的な責任です。
 70年来、我々はともに様々な厳しい挑戦を受けてきました。その全てが、我々をただ攻撃するだけでなく、我々をさらに強め、さらに安定させるものとなりました。
 私達はともに、八二三砲戦を戦い、ともに1996年の台湾海峡危機を乗り越えました。ひとつひとつの文化的、武力的な威嚇も、台湾人民を屈服させることはありませんでした。我々はともに、この我々の足元のこの土地を守り、国家の主権を守り続けてきました。
 我々はまた国際連合からの脱退を経験し、一度、また一度と断交の圧力に晒されてきました。しかし、世界へ羽ばたこうという台湾人民の決意は、何一つ変わることは有りません。
 1970年代の石油危機、1997年のアジア金融危機、2000年のITバブル、そして10年前の世界金融危機。経済はつねに課題に満ち、徒手空拳で世界へと躍り出た台湾人企業家、そして勤勉で創意に富んだ台湾の人々は、一度、また一度と危機をチャンスに変え、台湾の経済を前へ前へと進ませました。
 我々はまた、八七水害、九二一大地震SARSショック、八八風害を経験しました。天変地異という苦難を前にしても、台湾の人々は怯むこと無く生きる意志を示しました。家が破壊されれば、建て直し、土地が傷つけば、それを埋めてきました。涙を拭い、また立ち上がりましょう。明日はまた希望が詰まった一日となります。
 こうした共同の記憶は、台湾の人々の強さを示すものです。このような強さによって、我々をアジア四小龍の一員となり、辛く厳しい民主化の道のりを乗り越え、世界的にも重要な民主主義社会の模範となりました。
 たとえいかなる党派であれ、我々がともに歩んだこの道程は、ただこの土地に住まう人々がいる限り、分断することはできません。中華民国は、誰の専売特許でもなく、台湾もまた、誰かが独占することはできません。「中華民国台湾」、この六文字は絶対に「青色」(国民党を中心とする右派)のものでも、「緑色」(民進党を中心とする左派)のものでもありません。これはこの台湾社会最大の共通認識(コンセンサス)です。
 未来を見据えれば、その先には多くの課題が、我々がひとつひとつ克服することを待っています。
 我々は、権威主義体制をもとに、ナショナリズムと経済的な力を結びつけ、自由民主主義的な価値と世界秩序へ挑まんとする中国の発展、拡張を目の当たりにしました。このため、インド太平洋地区の戦略的前線に位置する台湾は、民主主義的価値を守る最前線となりました。
 中国は、「鋭い強さ」でひとつひとつ歩みを進めています。しかし、我々は明確に、この地域の重要な構成者として、台湾が国際社会に対する責任を果たしていかなければなりません。我々は挑発もせず。冒進もせず、想いを共にする国家とともに、台湾海峡の平和的安定という現状の一方的な変化を許してはなりません。
 これを行うために、我々は団結せねばなりません。台湾社会がかつて経験した族群エスニックグループ)、世代、党派の違いがあり、争いが芽生えても、対話を通じて我々は常に互いが受け入れられる最大公約数を探ってきました。経験が、衝突・対話・団結の進歩を証明し、国家を正しい方向へ誘ってくれるでしょう。
 我々は、かならず自由民主主義的な価値観を守らねばなりません。台湾のひとびとは、かつてともに民主化という辛い道のりを経験しました。民主主義には、ときには紛争や衝突があります。しかしながら、民主主義こそが、自由を保証し、そして未来を決定する権利を次世代へと伝えることができます。
 我々は、かならず壮大な台湾を維持しなければなりません。この三年間、我々は経済構造の調整に力を注ぎ、産業の高度化と移行、国際的な多元化を推進してきました。我々は投資を迎え入れ、世界的な経済変動の中で着実に歩み、その方向は誤りではなく、引き続き前に向かって進まねばなりません。
 この三年間、我々は社会的公平性を守り、給与を向上し、減税を行い、全面的な保護を行い、全国民に経済成長という果実を共有しました。将来的には、アップデートを推進し、育児補助の拡大を促進し、人々の負担を軽減し、誰もが質の高いケアを受けられるよう、政府は引き続き努力を続けていきます。
 この三年間、我々は自衛力を向上し、先進的な兵器を購入、国軍の士気を高め、戦力の確保を強化してきました。国産の高度な訓練機のプロトタイプはつい先ごろ完成し、国産艦船もまた、続々と戦列に加わっています。国土を守り、自由民主を維持すること、国軍はその責任を果たしています。
 この三年間、私達は積極的に国際社会に参加し、責任を果たし、貢献をし、地域の平和と安定を守る上で欠かすことのできない良き力となりました。我々はひきつづき、想いを共にする国と手を携え、より多くの協力機会を得られるよう努力を続けていきます。
 これから歩むべき道は、非常にはっきりしており、目標もまた明確です。
 第一に、国民が引き続き団結し、自由民主の旗のもとで、国家主権を守り抜くこと。
 第二に、壮大な台湾を持続し、経済力を強化し、国民をより豊かに、より強くしていくこと。
 第三に、世界へ向け、課題を克服し、中華民国台湾を国際社会で胸を張り、勇敢さと自信をみなぎらせること。
 前期において、我々の経済成長率はふたたびアジア四小龍の首位へと復帰しました。世界の経済論壇は、我々が世界四大「スーパーイノベーター」のひとつであると評価しました。我々のテックとイノベーティブ産業は、世界の最先端を走っています。
 我々のスポーツ選手、技術の担い手、多数の創意に富んだプログラマー、芸術家たちは、国際舞台で力を発揮し、台湾に栄冠と自信を与えています。
 我々が開発した福衛五號(Formosa 5)と福衛七號(Formosa 7)はつぎつぎに宇宙へ飛び、我が国の航空宇宙産業の力を表しました。人類が史上初めてブラックホールの撮影に成功したプロジェクトにも、台湾の科学団体が参加しています。
 我々が宇宙へ行き、5500万光年離れたブラックホールを見ることができる今日、果たして我々は、目の前にある課題から目をそらし続けることができるでしょうか。
 歴史上の苦難は、我々の力強さを前に、成長への力となりました。天災の挑戦もまた、我々の努力により、再生へのきっかけとなりました。この土地全ての努力する人、そして全ての人の努力が、我々の国を、一日一日よりよきものへ、より進歩したものへと変えていきます。
 国慶日の今日、この土地に住むすべての人々が、自由と民主の旗のもとで、希望を持って未来へ向き合い、かならず課題を克服するでしょう。台湾に祝福を。台湾頑張れ。中華民国頑張れ。皆様ありがとうございました。

 

注:()内は筆者注