能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(台湾政治外交)(中国ニュース)「ソロモン諸島、中華人民共和国と国交樹立か」

 今日(2019年9月2日)ロイター通信が、「ソロモン諸島が台湾との外交関係を破棄し、中華人民共和国との国交樹立を検討している」とのニュースを報じました。

 

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 ソロモン諸島は、太平洋、パプアニューギニアの東側に位置する人口約60万人の島国です*1。主要産業はほぼ第一次産業ですが、それも衰退しつつあるといいます。現在16ある*2、台湾(中華民国)と国交を維持している国は、ほとんどがこうした人口経済規模とも小さな国家ですが、それでも「国家」として台湾を承認しているこうした存在は、中華人民共和国政府にとって目障りな存在であり、さまざまな圧力をかけ続けています。

 現総統である蔡英文が就任後、パナマエルサルバドルなど5カ国が台湾と断交、中華人民共和国との国交を樹立しました。こうした要因となっていると指摘されるのは、中国のこれら国への資金援助です*3。ある断交国のなかには、中華民国政府に対して、中華人民共和国が提供する以上の資金援助をするよう要求した国家もあるといいます。

 先日の記事でも述べましたが、中華人民共和国政府は現政権に対して様々な圧力をかけています。こうした外交政策もその一つですが、蔡英文アメリカを経由してカリブ海諸国を歴訪した「報復」措置、さらにはアメリカ議会が通過した「台湾旅行法」を中心とする法律への圧力としてこれら措置が取られたとも考えられています。

 ソロモンでは2017年頃からソバガレ前首相の政策への不満が高まり、同年には新しい首相としてウエニプウェラが選出されました。ロイターの報道によれば、2019年4月の総選挙で再びソバガレが首相に返り咲いたのち、首相は外交政策の再検討を行うタスクフォースを結成、2019年8月には閣僚らを北京に派遣して会談を行ったようです。

 早ければ今週中にも、ソロモン諸島中華人民共和国との外交関係を樹立するとの観測が流れているようです。

 中華民国外交部によると、近年の両国関係は平穏で、2018年にもウエニプウェラ首相が台湾を訪問するなど往来も緊密であったとのことで*4、ソロモン国内でも中華民国との外交関係の維持を希望する声は少なくないといいます*5

 アフリカを中心として中華人民共和国が多額の資金援助を行い開発を促進している(一方で、これに関わる不正や借款への批判も根強い)ことはよく知られていますが、近年では太平洋諸国に対する同国の進出も盛んで、アメリカはこうした中国の姿勢を“predatory economics”(略奪経済、経済的略奪)であると批判しています*6。インド太平洋地域に対する軍事的展開を再検討中のアメリカにとって、太平洋地域における中国のプレゼンス増大は、明確に危機感を強める因子となっています。

 米台関係の「緊密化」は、一方でこうした中国の太平洋地域への進出と表裏一体で展開されており、台ソ断交が生じれば単に二国(三国)間関係の問題というよりも、米中関係を考慮に入れる可能性もあるかもしれません。