能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(語学)「日本人の中国語地名発音:ホンチャオゆきとマツヤマゆき」

 本日から通常更新復帰、と言いたいところですが、まだちょっと本調子じゃなさそうですね。

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ピンインで表記される中国鉄路のサボ

 ①:「北京」をなんと読むか

 さて、脈絡がよくわからない話ですが、空港にいると「日本航空81便 ホンチャオ行は、ご登場の最終案内をしています」とかいう案内をよく耳にします。不思議なのは、うろ覚えですが、「日本航空21便 ペキン行」であって、「ベイジン」行きではないんですよね。またさらに、「日本航空97便 タイペイ松山行」だった気がします。ソンシャンじゃなかったような…。この違いは何なのでしょう。

 中国語(北京語)の地名については、基本的に定着している地名読みについては、それを採用しているように思う(ペキン、ナンキンなど)。これはもとを正せば、清末の「郵政式ピンイン」に由来があるようですが*1、今となってはなんのことかわからないですよね。

 

②:「読み」の種類と地理教科書

 耳慣れない地名については、基本的に訓読みしているはずです(ジュウケイ、ダイレン)。チョンチン、ダーリェンなどとは言わないはず。

 都市の下位に来る小さな地名は、バラバラなようです。浦東はプートン、虹橋はホンチャオと、ピンイン(現地よみ)に近い発音をしていますが、松山はソンシャンだったかマツヤマだったか統一が取れていません(空港ではソンシャンでも、機内ではマツヤマだったり)。桃園もタオユエンと言わずトウエンであり、モモゾノとは言わないはず……。

 どういう整理をしているのか、一度研究をする必要があるように思います。

 実はこれ、日本の地理教科書でも同様の問題があり、中京大学明木茂夫先生がその表記や由来をまとめてます。 

 

 地理教科書に掲載されている中国地名のカタカナ表記については、ウェブサイトで閲覧でき、中国関連機関の推奨する発音表記と比較することができ、なかなか興味深いです。丸川先生も指摘していますが、

 この辺は文科省が悪いです。

www.chukyo-u.ac.jp

 

 なかなか珍妙というか、苦労するよなあというところです。杭州の州も、zhouの発音は、「ヂォウ」ぐらいかなあと思いますが、「ハンチョウ」「ハンジョウ」「ハンヂョウ」と揺れています。さらに、台湾だとおそらく「ハンツォウ」と発音します。

 ピンイン表記にしても絶対的ではない(正確ではない)と思うのですが、外国語である日本語(カタカナ)に移入するときにはさらなる苦労があります。

 

③:「四声」の魔の手:「重慶」を正確に読むには

 さらに、こうした表記には当然に「四声」(イントネーション)が表現できないので、どういう上げ下げがあるのかまったく不明です。

 私の友人は中国・台湾・香港などへよく旅行へ行きますが、地名の伝達は結構苦労します。重慶へ言った際には「重慶」をどういうふうに発音するかでひと悶着ありました。ある友人は「チョンキン」、「じゅうけい」、「チョン\チン/」。ピンインでは「Chóngqìng(チョン/チン\)。

 

notoya.hatenablog.com

 

 チョンキンは映画で有名になった、香港の「重慶大厦」に由来していますが、つまりは広東語由来です。「チョン\チン/」は北京語由来ですが、四声がずれています(「チョン/チン\」)。日本人は仮に北京語の地名読みがわかっても、四声まで正確に表現することが難しいので、中国・台湾人には伝わらないことがしばしばあります(私もよくあります)。

 また日本人の場合(中国人の場合)、地名が読めないと訓読み(ピンイン)で適当にごまかして読んでしまったりするので、なお混乱したりします。マニアックな地名だと明らかに読めないものが多くなってきますね。

 このあたりの謎の読み方が、歴史的にどう変遷してきたのか、詳しく見ていきたい気もしますが今日はこのあたりで。またお話しましょう。

 

 

*1:丸川知雄「「コワントン省」「チュー川」など、日本の地理教科書で珍妙な中国地名表記がされている由来を探求」」『東方』40⑤号、2015年、p.36、https://web.iss.u-tokyo.ac.jp/~marukawa/akegichimei.pdf