能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(台湾ニュース)「韓國瑜高雄市長、3ヶ月休暇を宣言」

 高雄市長の韓國瑜氏については、過去に当ブログでも取り上げました(不名誉な話題です)。

 

notoya.hatenablog.com

 

 この記事はそこそこ話題を呼び、いまだにアクセス数を稼いでおり、日本でも韓國瑜氏に対する関心の高まりを感じているところです。実際、現下の総統選挙の情勢は、現職蔡英文総統と韓國瑜高雄市長の事実上の一騎打ちとなっており、あまり日本では知られていない(日本語でのメッセージ発信をあまり行わない)氏に対する情報は、日本語ではあまり十分に得られない現状です。

 しかし、台湾島内では「韓粉」と呼ばれる中高年層を主体とする根強いファン集団が形成され、彼らを中心として選挙運動は熱狂的な盛り上がりを見せつつあります。

 さて、その韓國瑜高雄市長ですが、10月15日、選挙運動に専念するため16日から「休暇」を宣言しました*1

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韓國瑜氏(ウィキメディア・コモンズより)

 

①:約90日間の休暇、各界は反発

 この韓國瑜氏の休暇宣言に対して、ネットでは厳しい批判が噴出するとともに、柯文哲台北市長や蘇貞昌行政院長が皮肉、批判を述べるなど、各界は激しく反発しています*2

 しかし、市長職にある政治家が休暇を取得して選挙戦に集中することは、韓國瑜高雄市長が初めての例ではありません。2016年の総統選挙に参戦した当時の国民党朱立倫新北市長は、2015年から2016年にかけて62日間の休暇を取得しています*3。また2000年の総統選挙においても、当時の桃園県長であった民進党呂秀蓮氏も陳水扁候補の選挙支援、副総統候補として選挙活動に参加するため3ヶ月の休暇を取得しています*4

 行政院は、公職者が21日以上の休暇を取得する場合は、有給休暇とはならない旨を発表していますが、こうした休暇には行政院等政府部門への許可は必要ではないとのことです*5。もちろん、法的に問題はないわけです。

 

②:長期休暇は韓國瑜だけではない。なぜ批判を受けるのか?

 ではなぜ、各界から批判、とくにネット上では激しい反発が見られるのでしょうか。

 蘇貞昌行政院長は「見たことがない」と批判していますが、その要点は就任1年未満の新任市長がこれほどの長期間市政から離脱することへの批判であり、柯文哲台北市長は記者からの質問の中で、朱立倫の休暇を例外的なもので仕方がなかった(朱立倫は2015年10月に急遽出馬予定ではなかった総統選挙に出馬した)と説明しています。

 確かに、総統になる、ならないにせよ就任わずか1年で高雄市政を放り出して中央の選挙に「かまける」のは、選挙で選ばれた民選市長として基本的にはあるまじき事態なのでしょう。

 過去の民進党陳菊高雄市長、民進党頼清徳台南市長も、現任時に再選を目指した市長選では最長2週間程度の休暇を取得しており、国民党候補のみが選挙のために休暇を取得しているわけではありません*6。とはいえ、3ヶ月というのはいささか長過ぎる上、市長としての実績や職務態度も疑問視されてきた中での長期休暇は改めて批判の的となった印象です。

 

③:中盤選挙情勢と「休暇」の影響

  こうした韓國瑜高雄市長の「休暇」は、韓粉には暖かく迎えられ、彼らの凝集力を高める上では機能を果たしていると評価されています。韓粉は、ネット上で活発に活動しており、蔡英文総統の支持層と比較してもその凝集力が高いと言われています。

 一方で、こうした凝集力の高さ、先鋭化したその姿は無党派層の敬遠や、批判層の反発を招いているとも指摘されます*7。各種世論調査では、蔡英文候補に投票すると答えた有権者は30~40%、韓國瑜候補に投票すると答えた有権者は25~35%で、約5~10%程度の開きがあります*8。こうした状況を受けて、世論調査は信用できないのではないか?というコメントも見られるほどですが、韓國瑜支持層の厚さと凝集力の強さが、かえって蔡英文支持層の薄さ、広がりと反発しあっているとも読めます。

 ただまだ全体の30%程度が態度を決めていない状況で、韓國瑜候補の支持率も反転しつつある状況で、今後の選挙戦がどのように進むかは断言できない状況です。

 いずれにせよ、韓國瑜氏がなにか発言をするたびに大きなニュースになる状況ですから、悪名にせよ高く買われる状況になっています。

 

 <蔡英文関係の過去記事です>

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