能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(近代建築探訪)「日月潭老茶廠」

<要約>

・台湾にのこる「近代工場」を巡っていきます。

 ①:工場、近代なるもの。

 工場というのは近代の産物です。これまで家で、ひとりで(ないし少人数で)やってきた作業を、沢山の人と、交代でやるわけです。そこには個人もなにもなくて、基本的には流れてくる作業を横一線にこなすだけ。オリジナリティを発揮しようものなら解雇される。そういう世界です。

 批判しているわけではなくて、栄養状態が改善し、沢山の人が産まれ育ち、沢山の商品が必要に、消費するような社会に対応するには、こうした近代化した工場労働しか無かったわけですね。一方で、こうした工場は、その近代さを体現するものでなければならなかった。田舎から出てきた若僧や小娘が見かけとはいえ見て驚き憧れを抱くようなモダンさがなければいけない。カネにならない家内労働から、働いただけはカネになる工場労働への転換を意識させなければならない。また同じ商品を生み出すにはつねに同じ環境でなければならない。

 そのために、大規模な工場はなるたけ清潔で広々とした、明るく美しく機能的でなければならない。近代の工場は、その中身で繰り広げられる「脱人間的」な労働と裏腹に、出来るだけシンプルに美しく着飾らねばならなかった。

 今後何度かこうした台湾の「近代の工場」をご紹介していきます。

 

②:人里離れた山中にある製茶工場

 ひとつめにご紹介するのは、日月潭の近くに位置する「日月潭老茶廠」です。日月潭はご存知の人も多いと思いますが、南投県魚池郷に位置する湖で、日本時代に水力発電所として開発され、現在も台湾最大の発電量をほこる大観水力発電所のダム湖です(ただし、ダム建設で新たに湖が作られたわけではない)。

 標高が高く、景色も良いことから避暑地として今も人気があります。さながら芦ノ湖や河口湖のような風情です。

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 さて、ここ日月潭周辺では100年以上前からお茶の栽培が盛んで、とくに紅茶の栽培が有名です。日本時代には三井物産が開発し、日東紅茶として世に知られるようになりました。いまもこの地で紅茶が作られています。

 

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③:明るく開放的な工場

 台湾農林日月潭老茶廠は戦後、1958年に作られたものですが、窓が大きく天井が高く明るい室内に茶を焙じる機械や乾かす機械などが居並びます。

 これらの機械は今も現役で使われており、アッサム、紅玉紅茶、東方美人などの台湾を代表するお茶がここから旅立つそうです。もちろん、見学だけでなくショップもありますので購入できます(台湾としてはややお高めですが)。

 難点は交通が不便ということにつきます。私は先輩のお父様が連れて行ってくれましたが、公共交通だと南投県の埔里までバスで出て、そこから頂獅子までさらにバス、終点で下車し徒歩です。なかなか行きにくい場所ですが、日月潭周辺も含め雰囲気は抜群です。

 

 

〈地点〉

555南投縣魚池鄉中明村有水巷38號

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