(書誌紹介)吳邦謀『香港航空125年』(中華書局、2016年)
2019年5月にはじめて香港へ行きまして、子供の頃に見た『香港國際警察』イメージの香港を堪能しました。その話はまたおいおいしますが、香港で一冊本を買いましたのでご紹介します。
吳邦謀『香港航空125年(増訂版)』(中華書局、2016年、価格:188HKD)です。
その名の通り、香港125年に渡る航空の歴史を紹介しています。
そもそも香港は、中国大陸におけるイギリスの玄関として、自由港として貿易の拠点として19世紀以降急激な発展を遂げた地域です。近年では、広東省や福建省を「後背地」としてさらなる飛躍をとげつつあるわけです。
①:筆者は空港関係者
こうした香港にとって、母国たるイギリスとの導線を確保することは非常に重要な意味を持っていたわけで、19世紀末からの航空業の発展は、香港にとっても重要な意味を持ちました。こうした歴史を紹介するのが本書です。呉邦謀は航空関係の仕事に従事する人間で、これまでに本書を含め4冊の本を出版しています。
②:香港航空史の基礎資料
本書は、表題の通り香港の航空業の歴史を、熱気球から現在の赤鱲角にある香港国際空港までわかりやすくまとめています。本書で何より貴重なのは、200枚にもおよぶ写真で、中国語を介さないひとにも香港にまつわる写真を眺めて楽しむことができるでしょう。
③:啓徳空港の歴史が主役
本書の中心、コアとも言えるのが先代の啓徳空港です。本書では、誤解されたその命名の由来から日本軍による占領、拡張の歴史、さらには戦後の滑走路、ターミナル拡幅の變遷についてまとめています。日本ではあまり知られていないと思いますが、香港もまた日本により占領され、連合軍の攻撃・空襲を受けているのです。作者は空港関係者だからか、キャセイパシフィック航空に「ひいき」することなく、パンアメリカン航空が香港へ初めてボーイング747を飛来させた日のこと(1970年4月11日)や英国海外航空、民航空運公司(中華民国)のエピソードについても記述しており、どちらかといえばキャセイの記述は抑制的な気もします。
④:啓徳から赤鱲角へ
なかでも、啓徳空港の閉港と赤鱲角空港の開港については重点を置いて綴られ、1997年の香港返還を見据えて香港の新たな発展のために計画された赤鱲角空港について簡潔に読みやすくまとめられています。
⑤:結論、読みやすくよくまとまった入門書
総じて言えば、本書は読みやすく、香港航空業の歴史を知るには最も良い入門書であるように思います。各国でもこうした読み物としてよくまとまった航空業の入門書、解説書がアレばいいなと思わせるものです。筆者自身が大変な航空マニアであるからこそなしうる作品だと思います。台湾や中国大陸でも見つけることができるかもしれませんので、見かけた際は手にとってご覧になってみて下さい。
↓筆者が収集した8千点にも及ぶグッズを紹介した記事。パンアメリカンは「汎美航空」なんですね。