能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

(近代建築探訪)「台中駅舎」

 台中は現在、人口約280万人を擁し、台北・新北に次ぐ第二の都市として市区の改造に専心しています。現在の台中市は、2010年に旧台中市と旧台中県の合併によって生まれたもので、言ってみれば名古屋市と愛知県が合併し、愛知県全土が名古屋市になるという思い切ったものです。こうした市県の合併は、高雄市(高雄県)、台南市(台南県)、新北市台北県)でも見られます。

 そのため、台中には日本時代の建設された古跡と、2000年代以降に建築されたモダンな建築が並存する建築好きとしては心踊る街となっています。

 

 

 この近代と現代の融合が見られるのは、街の玄関でもある台中駅です。現在、高鉄の台中駅が開業したため、かつてのような正面玄関の役割は譲ったともいえますが、まだまだ交通の要所であることには変わりません。それはこの駅舎の構えからも読み取ることが出来るでしょう。

 

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 日本統治時代に建てられた旧駅舎は、1917年に竣工したものです。駅舎としては二代目で、2016年までの約100年間駅舎として使われました。

 この駅舎は、台湾総督府鉄道部工務課の設計です。時期的にもいわゆる「辰野式」に分類される赤煉瓦と化粧石の組み合わせが美しい駅舎です。

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 駅舎内もまた、立派な柱に大理石の床、開放感のあるホールと大規模とは言えないながらもいたるところに格調の高さを感じさせる作りです(現在内部の見学はできません)。

 

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駅舎だけでなく、ホームの柱や上屋まで繊細な細工が美しいです。現在、旧駅舎は駅舎としての活躍を終え、ホームも一部だけ保存されています。

 

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 まだ工事中ではありますが、そのうち修復され往時の輝きを市民に伝え残してくれることでしょう。

 

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  さて、これに代わる新たな駅舎は台湾一巨大な駅と言えるでしょう。高架化されたホームに大きく屋根が掛けられた姿は、先立つ潮州や屏東駅と同じように感じますが、そのスケール感と広々とした空間には圧倒されます。

 

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 JR大阪駅のような縦への広がりを強調するこの空間は、高架化され東西への移動利便性を向上させ、バスタクシーロータリーの一体化も含めた総合的な駅舎となっています。

 

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 コンコース前の広場から市内バスの乗り場が直結する手法は、ペデストリアンデッキの拡張ながら、機能的に映ります。

 

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 過去と未来が並び立つ様は、台中市の街としてのグランドデザインを象徴するかのようです。

 新駅舎の設計は、張樞建築師事務所+台灣世曦工程顧問(股)公司+中興工程顧問。張樞は、花蓮駅や猫空ロープウェイの駅舎を手がけ、各地の地下鉄などの設計に注力する建築家です。

 この愉快な台中については、また今後も取り上げていきたいと思います。