能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

台湾における「お盆」の話

こんにちは、お久しぶりです。前回「旅行記を書くと更新が途絶えるジンクスがある気がする」とかいうふざけたタイトルで記事を書きましたら見事に回収してしまいまして、半年間間が空いてしまいました。誠に申し訳ないです。さて、今年度(8月以降)も相変わらず台湾での滞在ということに相成りまして、いい加減台湾もなれてきたということで身の回りの雑録を適当にまとめていきたく思います。どうぞお付き合いを願います。

<要点>

・台湾は8月は「鬼月」(鬼月あるちゅ)と呼ばれ「鬼」(霊)がこの世をうろつくあまり縁起が良くない月、15日前後に祭祀を行い慰撫する

  本日は8月15日、日本でいうとお盆で、コミケを回避するということだけ空気を読んだ台風が絶賛西日本の交通を混乱に陥れておる時期でございます。年間でも年末年始、GW、そしてお盆は列島世界へ有象無象が移動する時期ではございますが、いわゆるお盆は少し特別な時期かと思います。暦の上では特に休日が続くわけでもなく、銀行や郵便局などは平常通り営業をしているところも多い。ただ多くの日本人がこの時期にお休みをいただいておのおのの実家へ顔を出し、先祖供養を行うというのが割と広範な習慣になっています。この辺歴史的に紐解きたい気もしますが、本題は台湾です。

 この時期先祖供養よりも己の欲望を重視するというのもまあ悪いわけではありません。墓は逃げないのですからむしろ日々気軽にお参りしてさしあげるのが供養というもの。というわけでこの時期は台北の街頭で日本語を聞く機会も普段より増える時期です。

 そうしてお盆の台湾へ降り立った皆様がおそらく気がつくのは、クソ暑さ。もとい街角の至るところでテーブルを出してお菓子やジュースなどを積み上げお香を焚き染めている光景です。

(ここにいい感じの写真を後で入れる)

 これを見ると(というよりお香の匂いをかぐと)、「ああ台湾も日本と同じくお盆があるんだね」と思われるのですが、微妙に事情が異なります。台湾ではお墓参りのこと、「掃墓」(sao3mu4)と言います。直感的に分かりやすいですね。一般的に掃墓を行うのは4月5日か4日の「清明節」と呼ばれる日です。清明は日本でも使われる二十四節気のひとつでもあり、黄帝の誕生日とも言われます。台湾では、「民族掃墓節」という休日になっており、一斉墓参りデーとして墓が盛り上がりを見せます(ゲゲゲの鬼太郎みたい)。この前後は連休になることが多く、交通機関は混雑します。

 というわけで、一般的に台湾では8月に墓参りは行われません。それどころか、あまり寺廟に参拝もしないといいます。日本ではお盆にご先祖が帰ってくると言われています。台湾でも中国でもそのあたりの起源は同じですが、仏教と道教の融合によって、台湾では特に旧暦7月15日(8月15日前後)を「中元」(お中元のアレ)と呼び、祭祀を行う「中元普渡」が行われます。

(この辺にいい感じの写真)

 この辺中国と台湾で習慣が違うようなのですが、福建省や台湾などでは、旧暦(農暦と呼ぶことが多い)7月1日の0時に地獄の門が開き、「亡者」がこの世へと渡ってくるそうです。この解き放たれる亡者は、いわゆる悪鬼や餓鬼、可憐鬼など地獄で苦しむ者たちであり、彼らは1ヶ月間この世界の滞在を満喫するそうです。言ってみればこの1ヶ月間はそこいらじゅうに「鬼」(霊)がうろちょろしていることになります。霊感がある方はどうにも大変な季節でしょう。結果的に、台湾では旧暦7月の間は、基本的に結婚式などの慶事を行わないといいます。この1ヶ月間は、鬼を刺激しないよう基本的には殺生を慎み、川や海などの水場へは近づかないように気をつける。日本でもお盆の川遊びをタブーとする地域がありますが、実はこうした所縁によるものと思われます。

 日本人にとってはのどかにご先祖様のお帰りをお迎えするお盆ですが、台湾では地獄の釜の蓋が開き魑魅魍魎が跋扈するとっても恐ろしい月、「鬼月」なのです。そのなかでも中元は、こうした鬼をなだめ食事を振る舞う大切な儀式で、そこいらじゅうの街角や寺廟で祭祀が行われます。先程中央研究院(台湾の国家研究機関)を通り過ぎましたが、生物科学系の研究機関前でも盛大に祭祀(台湾では拜拜bai4baiと言います。発音上はパイパイに近いです)が行われているのを目撃し、「科学とは」という気持ちになりましたが、それだけこの中元は台湾人にとって重要な節日ということになるのでしょう。

 基隆で行われる「雞籠中元祭」は台湾でもとても有名な「お祭り」だそうです。一味違った台湾の「お盆」はいかがでしょうか。

 くれぐれも水難事故には気をつけましょう

 

参考