能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

機長はベテラン

 みなさんは、「メーデー!」という番組をご存知でしょうか。日本ではおもにCSのナショナル・ジオグラフィックチャンネルで放映されている、「航空機事故」を取り扱った番組です。現代の航空機事故のうち、特に印象的な(被害が大きかった)事故を取り上げ、再現VTRを核として事故調査委員会が事故原因に迫っていく様子を描いた作品です。

 

 この番組では、主に欧米の航空機事故が取り上げているのですが、現在までに放映されている14シーズンのうち、出場回数が多い航空会社は以下のようになっています*1

  1. アメリカン航空 6回(合併したUSエアウェイズ4回、USエアが合併していたパシフィック・サウスウエスト航空2回を含まず)OW
  2. エール・フランス航空 5回 FT
  3. ブリティッシュ・エアウェイズ 3回(前身の英国欧州航空を含むと5回)OW
  4. チャイナ・エアライン、大韓航空 3回 FT

 主に欧米の航空機事故を取り上げている関係で、歴史も長いアメリカン、AF、BAが上位にランクインしていますが、アジア勢としては台湾のチャイナ・エアライン(中華航空)と大韓航空がランクインしています。

 航空機事故の発生要因はいろいろありますが、大別してパイロットミス、機械的故障、天候不良、破壊行為(ハイジャックなど)、管制ミスがあげられます。これらはものによっては、かならずしも航空会社の責任に帰せられない事故もあるのですが、どうしても「回数」を重ねる航空会社には不信感がよせられてしまうのは致し方がないでしょう。

 そうしたなかで、我々?「メーデー!」ファンに感銘を与えたのは、チャイナ・エアラインと大韓航空と言えるでしょう。両者は「メーデー!」外でも「数多くの著名な」航空事故を発生させました。それにより、かつてチャイナ・エアラインは「華航四年大限」(四年魔咒:中華航空は4年に1度重大な航空事故を発生させる)*2などと揶揄されており、日本でも那覇空港で機体全損事故を発生させています。「メーデー!」では、急降下事故や空中分解が取り上げられています。

 大韓航空も冷戦時代に「撃墜」「銃撃」「爆破」を経験したほか、1997年から9年にかけて3件もの墜落事故を引き起こすなど、「危ない」航空会社というイメージがつきまとっていました。

 「メーデー!」では、この大韓航空における事故の発生要因について独特の説明をしました。いわく、大韓航空では、階級にもとづくパイロットと他のクルーの力関係が歪で、クルーが機長に意見を具申できない風潮があると。そしてこの風潮は李氏朝鮮時代からの「儒教」的倫理観が原因である、というのです。この説明は随分な暴論であると思うのですが、以降大韓航空儒教というイメージが扶植されてしまいました*3

 では、現在の大韓航空はどうでしょうか。大韓航空といえば、2014年に副社長が引き起こした「ナッツ・リターン」で一躍その名を世界に轟かせ、韓国中が猛非難を繰り広げたことが記憶にあたらしいことと思います*4

 こうして見ると、韓国での「上と下」をめぐる権力の関係は、「儒教的倫理観」と呼べるほど簡単なものでも無いような気がします*5。韓国での思想や世論の是非を問うわけではありませんが、色々と思うことはあります。

 

 

*1:筆者調べ

*2:

華航四年大限 - 维基百科,自由的百科全书

*3:当該はシーズン9、第8話「大韓航空8509便墜落事故」

*4:

大韓航空ナッツ・リターン - Wikipedia

*5:儒教発祥地の中国や台湾、封建的な思想が残る日本はどうなるの?