能登屋備忘録:台湾生活日記

能登屋の日常を淡々と描く作品です。

鉄道的ミステリ。

 ネットニュースを見ていますと、TBS系で「十津川警部」を演じている渡瀬恒彦さんが体調不良により降板するそう。高橋警部より渡瀬警部が好きだった私としては残念なことですが、ご病気の快癒をお祈りするのみ。代役は内藤剛志さんだそうですが、渡瀬警部より硬派な感じになりそうですね。

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 最近はあまり読みませんが、中学時代でほぼ西村京太郎の「十津川警部」シリーズは読んでしまいました。今から見ればいろいろ思うところはありますが、当時とすれば読むだけで旅情やなんやをほんのり感じ取ったものです。ただ、当時も今もおそらくあまり変わっていませんが、氏の作品を愛読したひとつの要因は、「古い時代の鉄道の風景を探す」ということにありました。

 代表作と言える『終着駅殺人事件』は1980年の作品ですが、当時といえば同作の舞台となった上野駅が最後の輝きを見せた時期であったと思います。殺人は「ゆうづる7号」で発生するわけですが、鉄道趣味に回帰しつつあった中学1年生の私としては「ゆうづるが…7号もあったの…」(10月の改正前は5往復あった)というところから驚きでしたし、その後の情感あふれる描写や亀井刑事の上野駅への愛着あふれる発言などを読んで、当時の上野駅に思いを馳せました。

 もう少し時代が下って読み始めたのは、島田一男の『鉄道公安官』シリーズです。いまやご存じの方もほとんどおられないかと思いますが*1、1960-70年代を舞台に、鉄道公安官海堂次郎が日本全国を股にかけて事件を解決する物語です。いまや鉄道公安官自体が過去のものですが、国鉄時代は国鉄敷地内において司法警察権を持つ「公安職員」がおり、スリや置き引きなどの犯罪などに対処するとともに、石油輸送や現金輸送への警戒、あるいは旅客への案内などを行っていました。十津川警部シリーズより時代が古いので、登場する列車が凄かったことが印象にあります。『鉄道公安官』では東海道本線を走る「急行」出雲・「特急」つばめが登場しましたし、『黒い津軽海峡』では青函連絡船常磐線をゆく「マニ30」(古い方)なども出ました。手許にないので作品名と登場列車が一致しないのも多いのですが、駅構内・ホーム・車内・路線の描写がとても詳しく、交流電化試験が始まった頃の仙山線における機関車付け替えの描写などもありました。

 こうやって、ミステリの本質とあまり関係がないかもしれない、古い鉄道の描写を「耳学問」するうちに、なぜだか国鉄を好む鉄道オタクが出来上がっていきました。そうした意味では、鉄道趣味の原点はこうしたトラベルミステリーと呼べる作品の中にあるのかもしれません。

 文学作品にある鉄道描写というのは、侮りがたい魅力がありますね*2

*1:電子書籍で読めるようです→鉄道公安官 シリーズ/島田一男 - honto電子書籍ストア

*2:鉄道的ミステリの代表作?と言えるのは『オリエント急行殺人事件』かと思いますが、映像作品のイメージが大きいです